リモートワーク、してますか?
今日は昨今のリモートワーク(テレワーク)が普及しつつある環境で、非常に便利なワイヤレスイヤホンについて書きました。なんとなく、全体「〜である」調で。
2019年10月、Appleがワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」を発表した。2ヶ月待ちになるくらい大人気の商品となった。あのAirPodsの使い勝手に、ノイズキャンセリング機能が加わったという点が非常に評価されている。
この記事は、そんな大人気のAirPods Proと普通のAirPods、最初に買うならどっちを買うべきか?という疑問について、
両機種を徹底的に使い込んだうえで、ありきたりなスペックレビューではなく、実体験を元に、AirPodsという製品が生み出した価値とユーザー体験に重きを置いてお話する。
もくじ
1. 結論から。買うなら絶対にAirPodsだ。Proではない。
スペックで比較すると十中八九AirPods Proの方が良い。全部載せのProだからである。
だがしかし、私の経験と人生と魂を込めて言わせてもらう。
まだAirPodsもAirPods Proも使ったことのないあなた。
どちらか迷っているのなら、絶対にAirPodsを買うべきだ。
スペックの比較ばかり見ていると、一番肝心なことを見落とすぜ。
もう一度言う。Proじゃない。無印AirPodsを買うんだ。
理由は至ってシンプル。たったひとつだけだ。
イヤホンに、今まで無かった「価値」を与えてくれる製品は、AirPods Proではなく、AirPodsだからである。
AirPods Proは、全部載せたようでいて、一番肝心なAirPodsが築いた価値を載せ忘れたちょっと残念な製品なんだ。
筆者のAirPods Proと無印AirPods。Proには「拾ったら090-XXXX-XXXXまで」というダサい刻印を入れてある。売れない。壊れるまで使うつもり。だが、出番はPro:無印で1:4くらいだ。
2. Proを推さないのは俺損
正直に言う。
他のAirPodsを紹介しているブログサイトと同じように、当ブログでもアフィリエイトが貼られている。このブログ経由で購入してもらえると、数百円が筆者に入る仕組みだ。
だから、値段の高い商品を、読み手が買いたくなるように紹介した方が、私にとっては得である。
しかも、スペック的には殆ど全ての要素でAirPods Proの方が優れているので、Proを買うべきだ、という記事のほうがずっと書きやすい。
でも私はそんなこと書けない。だって心の底からProよりAirPodsの方が、良い体験ができる製品だと信じているから。
それがどういうことか、以下に説明しよう。
3. AirPodsは尖っていた
私がAirPodsを初めて手にしたのは、2017年だが、それまでのイヤホンという物に求められていた最重要の要素は「音質」であった。高音質なイヤホンほど高価であった。
もちろん当時も、無線を用いたコードからの開放を謳うイヤホンもがいくつも販売されていた。
しかしそれらはまだ、度重なる切断問題やバッテリー問題など、様々な課題を抱えた、非常に不安定な発展途上の製品だった。
そんな中で16,800円という強気な価格にも関わらず、iPhone付属のイヤホンとなんら音質の変わらない、つまり、その価格のほぼ全てを、音質ではなく「無線機能」に振り切った、非常に尖った製品が発売された。それが初代AirPodsである。
4. しかし刺は価値へと変わった
初めてそれを手にした時、私は困惑した。
当時は有線ではSHUREのSE535LTD-JやBOSEのQuietComfort 20という機種を、無線ではソニーのイヤホン(接続機器)をそれぞれ愛用していたのだが、AirPodsという極めてノーマル音質のイヤホンに、本当にこの価格ほどの価値があるのか、不思議で仕方なかった。
しかし、そのデザインを“うどん”とさえ揶揄された摩訶不思議なAirPodsを試したところ、信じられないほどのユーザー体験を与えてくれた。
その体験こそが、圧倒的な「手軽さ」である。
装着していることを忘れてしまうような軽さ、およそバッテリーを心配せずに使える充電式ケース。装着するとシームレスにイヤホンに切り替わるスムーズさ。
これは想像を超えるものだった。私はすぐにAirPodsのヘビーユーザーとなった。音楽のリスニングスタイルはもちろん、電話での通話スタイルすら、AirPodsを使い始めてから完全に変わってしまった。
もちろん音質という点では有線の高級イヤホンには敵わない。しかしイヤホンを選ぶ際に「手軽さ」という価値があることを、ユーザー体験と共に教えてくれた。
常に新しい価値観を生み出すという、Appleの企業体質を色濃く反映させてくれた意欲的な商品だと痛感させられた。以来、SHUREやBOSEのイヤホンの使用頻度は極めて低くなってしまった。
そしてその手軽さという価値を最大限に体験できるアイテムこそ、Proの名を冠していない、無印AirPodsなのである。
5. 待望のノイズキャンセリング
AirPodsはコンセプトとしてはほぼ完成された製品だった。しかし、敢えて足りない要素があるとしたら、音質や、BOSEやSONYなどが得意としていたノイズキャンセリング機能だ。
ノイズキャンセリング自体はとても便利な機能なので、私も騒がしいカフェで落ち着いて仕事をしたい時や、飛行機に乗る時などにはBOSEのQuietComfort® 20という機種のイヤホンを使っていた。
そんな待望のノイズキャンセリング機能を搭載し、一見、向かうところ敵無しになったかに見えたAirPods Pro。だが、それを得るための代償はあまりにも大きかった。大きすぎた。
6. ProはAirPodsの最大の強みを失った
AirPodsのイノベイティブな点は、繋ぐことさえ忘れてしまうシームレスさ、装着していることも忘れてしまうくらいの手軽さ である。
音楽を聴く時や電話の時はもちろん、デスクワーク中は常時装着。もはや体の一部であるかのように、装着している事すら忘れてしまっている、AirPodsはそんなガジェットだった。
その心地よさに、ノイズキャンセリングが加わったと、期待してAirPods Proに手を出したのだが、期待は大きく裏切られた。
7. 装着している事を“忘れさせてくれない”(本記事の核心部分)
ノイズキャンセリングを採用するにあたり、AirPods Proはカナル型(耳栓型)を採用した。音漏れが少なくリスニングに集中しやすい形ではある。しかしこれが失敗だった。
同じノイズキャンセリングイヤホンでも、BOSEのQuietComfortやQuietControlシリーズは、イヤーチップが工夫されていて、長時間リスニングしていてもあまり疲れないよう設計されている。
しかし、AirPods Proはオーソドックスなカナル型。耳栓のようにしっかりと耳に入れて使うタイプである。これだけでも耳に「入っている」感があるのだが、更にノイズキャンセリング機能をONにすると、静けさと引き換えに、無言の圧とでも言うような圧迫感を与えるのである。
そしてこれをずっと装着し続けているのは、苦痛なのである。
8. 奥ゆかしい嫁から、主張の激しい嫁に。
無印AirPodsが『何も言わずそっと支えてくれる嫁』だったのに対し、AirPods Proは『ハイスペックだけれど主張が強い嫁』となってしまったのだ。
更に、バッテリーの持ちも悪くなったため、付けたり外したりを行う頻度は余計に増えてしまった。
AirPods Proはノイズキャンセリングと引き換えに、AirPodsの最大の価値「付けていることさえ忘れさせる手軽さ」を失ってしまったのである。
大げさに書いているように見えるかもしれないが、この違いは体感としてはものすごく大きい。
9. ノイズキャンセリングイヤホンとしては全く悪くはない
「無線式ノイズキャンセリングイヤホン」というカテゴリーで見た時、AirPodsはノイズキャンセリング性能も音質もある程度のクオリティを持つ優秀なイヤホンである。
ただし、AirPodsという商品が生み出した「価値」をより高めてくれる製品か、という視点で考えるのなら、全く期待には応えてはくれない製品なのである。
「無線式のノイズキャンセリングイヤホン」という、すでに存在する土俵で比較されている時点で、AirPodsが本来持つ価値を失ってしまっているのだ。
AirPodsもAirPods Proも製品としては素晴らしい。
しかし、アタリマエのようにずっと装着していて、アタリマエのようにそのまま音楽を聞き、アタリマエのようにそのまま電話の受け答えも行う。
…という、今まで知らなかったアタリマエを教えてくれる製品は、間違いなくProではなく無印AirPodsなのである。
Proはその特性上、ずっと付けていると少し疲れてしまう。だからその機能が必要な時にだけ装着する、今までとさほど変わらない従来通りの「イヤホン」なのである。
そして残念ながら、そこには僕らをワクワクさせてくれるような、Appleらしい新しさは無いのだ。
10. AirPodsはこう進化すべきだった
AirPods Proとほぼ時を同じくして、HuaweiがFreeBuds3というノイズキャンセリング機能付きワイヤレスイヤホンを発表した。
僕はこのイヤホンのとった形こそが、AirPodsの本来進化すべき形だったと思っている。
FreeBuds3は、ノイズキャンセリング機能を搭載しながらも、形は一般的なイヤホン(Appleのイヤホンによく似た)型を採用しているので、装着感を全く損ねない。
言うなれば、更に何も言わずそっと支えてくれる嫁。
ノイズキャンセリング性能や遮音性は、密閉されている分AirPods Proの方が優れている。しかしその点を比較するのであれば、SONYのWF-1000XM3やBOSEなど他社にも優れた製品はたくさんある。
AirPodsが本来持つ「手軽さ」を失わない形で、ノイズキャンセリング機能を搭載したようなイヤホン、それがHuaweiが FreeBuds3なのである。(もちろん、AirPodsではないので、AirPodsのようなApple製品とのシームレスな接続はできないが。)
AirPodsもこのような形でProの名を冠してほしかった。今でもそんな新製品の登場を心待ちにしている。
11. それでもAirPods Proのすごいところ
ダメ出しばかりしてしまったが、AirPods Proにも感動的な部分があった。それが外部音取り込み機能だ。
ノイズキャンセリングイヤホンのマイクを使って周囲の音を取り込む機能だが、これの自然さが素晴らしかった。
今までのイヤホンにあった外部音取り込み機能では、どうしても「マイクで拾った音をイヤホンから流しているな」という感じがした。しかし、AirPods Proは非常に自然な音質で外音を取り込んでくれるため、外部音取り込み機能がオンになっていることに気が付けないことすらあった。
この点に於いてはAppleの技術力・調整力は本当に素晴らしい、ぜひ全ての人に体験してほしいと思うほどである。
がしかし、外部音を取り込んでいる状態で使うなら、そもそも外音が聞こえてくる無印AirPodsの方がずっと快適なのである。
結局ここに最大の矛盾を抱えてしまうAirPods Proなのである。
12. ワイヤレスチャージャーは必要か?
AirPodsにはイヤホンは同じですがケースの違う、ワイヤレスチャージャー有りモデルと無しモデルがあり、少しだけ値段が異なってくる。
どちらを選ぶか、というところだが、個人的にはこのワイヤレスチャージャーは、今は不要だと考えている。
もしも次期iPhoneからUSB-Cを採用し、持ち歩く充電端子の種類が増えてくる場合や、iPhone本体にワイヤレス給電機能が備わった場合、AirPodsのワイヤレスチャージはとても便利になるだろう。
しかし、今時点ではワイヤレス充電は無くても全く問題はない。2020年春、iPhoneユーザーに一番おすすめのイヤホンは、無印の(一番安い)AirPodsである。
13. スペック比較表(見たい人へ)
蛇足ではあるのだが、スペックでも比較しておきたいという方のために、特に重要な要素をピックアップして表にした。
AirPods Pro | AirPods 第二世代 | AirPods 第一世代 | |
モデル番号 | A2084、A2083 | A2032、A2031 | A1523、A1722 |
発売年 | 2019 | 2019 | 2017 |
アクディブノイズキャンセリング | 有り | 無し | 無し |
形 | カナル型 | オープンイヤー型 | オープンイヤー型 |
Siri | Hey Siri対応 | Hey Siri対応 | Hey Siri非対応 |
再生時間 | 最大4.5時間の再生時間 NC不使用時は5時間 最大3.5時間の連続通話時間 |
最大5時間の再生時間 最大3時間の連続通話時間 |
最大5時間の再生時間 最大2時間の連続通話時間 |
充電ケースの併用 再生時間 |
24時間以上の再生時間 最大18時間の連続通話時間 |
24時間以上の再生時間 最大18時間の連続通話時間 |
24時間以上の再生時間 最大11時間の連続通話時間 |
急速充電 | 5分の充電で1時間再生 または1時間以上の通話 |
15分の充電で3時間の再生 または2時間の通話 |
15分の3時間の再生 または1時間の通話 |
重さ | 本体:各4g ケース:45.6g |
本体:各4g ケース:40g |
本体:各4g ケース:38g |
ケースサイズ | 高さ:45.2 ×幅:60.6 × 厚さ:21.7 mm(横長) | 高さ:53.5 ×幅:44.3 × 厚さ:21.3 mm(縦長) | 高さ:53.5 ×幅:44.3 × 厚さ:21.3 mm(縦長) |
価格 | 27,800円 | 17,800円 または22,800円(ワイヤレス充電ケースの場合) |
16,800円(販売終了) |
14. 終わりに
AirPods ProはAirPodsの名を引き継ぎながら、単純な上位互換ではない。高いから、安いから、ハイスペックだから、という理由で選ぶものではない。
AirPodsを使っていると、それは素敵なことに、生活になくてはならないものになる。そこでProが欲しくなる。これは当然の流れだ。だが残念ながら、AorPods ProはAirPodsほどの「手放せないアイテム」には、まだなることができていない。
これからどちらかを買おうかと考えているあなた。一度ぜひ騙されたと思って、通常のAirPodsを選んでみてほしい。今までのイヤホンで体験できなかった快適さを体験できるはずだ。
15. 商品リンク一覧
読みやすさを重視したいので商品リンクは下記にだけまとめた。本記事で紹介したAirPodsの他、登場したイヤホンも一応載せておく。
「〜である口調」割としんどかったである。