今回はヲタ活です。チルヲタことMr.Childrenオタクなので、歌詞の考察をしつつその曲のシチュエーションを再現するような写真を撮りたいなと思ってました。
そんなことを考えてたら、InstagramでMr.Children好きの被写体さんを見つけてしまったのでこれやるしかない…というわけで、曲考察with写真をします。
第一弾(第二弾あんの?)はMr.Children屈指のラブソング、君が好きです。
「君が好き」という曲
おそらくこの曲は世間一般ではいわゆるラブソングだと認識されていると思います。恋人に歌ってもらいたい歌とかそういうカテゴリーの。
でもちょっと待って。間違ってもカラオケで恋人に歌ったり、結婚式で流したりしたら絶対にアカンやつですこの曲は、はい。
ラブソングであることは間違いありませんが、危うさと表裏一体のラブソングです。ぶっちゃけ「浮気とか不倫の曲」って言い切っちゃった方がいいかもしれません(笑)
捻ていて、こじらせていて、素直でもなくて、おそらくは道徳からも外れていて、それでも消すことのできない「君への想い」を歌った曲です。
モデル協力: まなせさん(Instagram)
前進も後退もない悶々
もしもまだ願いが一つ叶うとしたら…
そんな空想を広げ
一日中ぼんやり過ごせば
月も濁る東京の夜だ
そしてひねり出した答えは
この冒頭での願いは「僕が告白してOKしてくれたらいいな」ではないんです。back numberのクリスマスソングのような気持ちではない。
後述しますが、「もしもまだ願いが一つ叶うとしたら」という含みにもあるように、一番最初に願うようなもの、つまり両思いになりたいな、みたいな願いはおそらくすでに既に叶っているんです。
君が好きという物語りの中では、最初から「君」もまた僕のことを、友達以上、あるいは恋人のような特別な存在に、慕ってくれてはいるんです。
それでも、手放しに踏み出せない環境や、人間関係いろいろなものが絡まりあって、もやもやしたまま1日を過ごしているのが僕です。
もしもまだ願いが一つ叶うとしたら…
この時考えている願いはおそらく君とおおっぴらに愛し合える環境だったらいいのにとかそんなことじゃないでしょうか?
君が好き
君が好き 僕が生きるうえで
これ以上の意味はなくたっていい君が好き この響きに
潜んでる温い惰性の匂いがしても
この曲を語る上で一番大切なところ。この曲は「君を愛している」ではないんです。「君が好き」です。
英語にすると、
I LOVE YOU. (僕は君を愛している)
じゃなくて、
IT IS YOU WHOM I LOVE. (君なんだ、僕が愛しているのは)です。
(目的格の関係代名詞 whom )
複数の選択肢があるからこそ「を」ではなく「が」という助詞が出てきます。
一体自分はどうしたいんだ?とか、本当に踏み出してしまっていいのか、とかそんなことを悶々と考え続けます。丸一日。
そして、他のことなんてどうなってしまってもいいや、他の意味なんてなくたっていいやと、ちょっとヤケクソも混じったような気持ちで捻り出すんです。
あるいは最初から答えは出ていて、でもそれは適切な感情ではないから捨てよう捨てようと思うんだけど、どうしたってその気持ちを消すことができない。それで悶々とし続けているのかもしれません。
ああ、僕を信じ切っているあの人(恋人)を嫌いになれもしないから余計わからなくなる…(UFOより)
ああ、分かり合えた友の愛した人を好きになってしまった…(Tomorrow never knowsより)
みたいな感じですね(笑)
もしも歌詞の「君が好き」を「愛してる」に置き換えて歌ったら、全体の歌詞と不整合だらけでおかしなことになっちゃいます。
惰性の匂い
2番歌詞に惰性の匂いというのもこの「が」に通じています。(惰性というのは【今までの習慣や癖】という意味です。)
I LOVE YOU.よりIT IS YOU WHOM I LOVE.ってだいぶ惰性的でしょ?
だってI LOVE YOU.は何もないところからでも発せられるけれど、IT IS YOU WHOM I LOVE.って、例えるなら、「私は(あなたは)一体どうしたいの(誰が好きなの?)」って聞かれてる時の答え方です。
君が好きって表現は全然潔くないんです。含みがすごくたくさんある。
今付き合っている彼女だったり、今まで築いてきた社会的な立場だったり、反対する家族や親族の環境だったり、いろんなしがらみが想像できますが、それでも僕が一番大切にしたい、優先したくなってしまうのは君なんだ、だから君が好きになってくるんです。
月が綺麗ですね
月も濁る東京の夜だ
歩道橋の上には 見慣れてしまった 濁った月が浮かんでいて
汚れていってしまう 僕らにそっと あぁ 空しく何かを 訴えている
「月」と「I LOVE YOU」から連想されるものというと、まず第一に夏目漱石ではないでしょうか?
「I love you」を「我君を愛す」と翻訳した教え子に対して、「日本人はそんなことは言わない。月が綺麗ですねとでも訳しておけ」なんて言ったという逸話があります。
本当にそう言ったという文献や証拠はどこにも残っていないそうで、都市伝説の類なのかもしれません。しかし、日本語の奥ゆかしさや情緒に響くところがあるのも確かなので、都市伝説だとしても、一理あると思えてしまう翻訳です。
さて、君が好きに話を戻します。この歌詞では月が2回出てきますが、漱石の場合と違って月が全然綺麗じゃないんです。
それどころか濁ってる。深読みしすぎかもしれませんが、漱石との対比、つまり、「我君を愛す」との対比関係も含まれているんじゃないかと思います。
そしてこの濁った月が、月と同じように汚れていってしまう僕らに何かを訴えているのです。
汚れていく僕ら
この「汚れる」って何を想像しますか?
若い人だったり、あるいはクリスチャンだったりすれば、裸になり甘い体温に触れて優しさを見せつけ合うことを汚れるって表現するかもしれません。
でもアパートの脇に缶コーヒー買っていく年齢って、たぶんそれなりに大人だと思うんです。この君と僕は。
そんな大人の汚れっていうと、なんでしょう。
浮気や略奪愛、あるいは決められている相手とは違う人を好きになってしまった。そのあたりがしっくり来るのではないでしょうか。
自分か相手、またはその両方にパートナーがいる状態での恋なのかもしれません。
夜の淵 アパートの脇
「本当に天才だよな」と思わせるられる歌詞です。
淵には「深い。また、深く静か。」という意味があります。「夜の淵」というのは、人の気配がないようなひっそりとした夜。おそらく深夜でしょう。
そして会う場所は「アパートの脇」。脇は「主なものに対し、それに添うような位置」。
深淵の中、さらにアパートのオモテではなく光の全く当たらないような暗い側面です。そんな場所で会うんです。
普通のラブソングだったら日中に広い公園へ行ってブラブラ歩いて手を繋いだり犬を連れていたりすればいいんです。
もしくは古い遊園地の観覧車にでも乗ればいい。
人気のない深夜にアパートの脇で会う関係ってなんでしょう?とりあえず人に見られたら非常にまずい関係であることは間違いないでしょう。
君を待ち
この曲の中では実は僕は最後まで君に会っていません。
悶々と1日中悩んで、君に合う覚悟をして、アパートの脇で缶コーヒー持ちながら君を待っている、そこでこの物語は終わっちゃうんです。
にも関わらずCメロでは「汚れていってしまう 僕ら」という歌詞で、これから起こる未来のことを示唆しています。
これってつまり君が好きという想いをハッキリと伝えたら、色々な物やバランスが壊れますが、それでも君が僕を選ぶであろうことを、僕もまたわかっているってことなんです。
だから「汚れていってしまう 僕ら」という表現ができます。冒頭で書いた「君もまた、僕と同じように友達以上、あるいは恋人のような特別な感情を抱いてくれている」という関係性はこの辺りから読み取れます。
おそらくあまり倫理的ではない両想い。そんな僕から見る濁った月は、まるで何かを訴えかけているように、今日も変わらず空に浮かんでいた。そんな情景です。
見慣れてしまった濁った月というのは、繰り返し汚れていく自分(たち)のことを示しているメタファーかもしれせん。
全然綺麗なラブソングじゃない。でもすごく真っ直ぐな気持ちの歌。それが君が好きです。
Mr.Children異例の構成
君が好き 君が好き
煮え切らないメロディに添って 思いを焦がして
Mr.Childrenの櫻井氏は以前雑誌のインタビューで【「曲名=サビ」というわかりやすい物は極力避けている】ということを口にしています。
例えば、壮大な愛のバラードである「しるし」などでも「しるし」という単語が出てくるのはCメロで1箇所だけです。
また、HEROやSign、HANABIといったヒット曲でも、サビ中に曲名は存在しますが、決して目立つような箇所ではなく、歌詞の自然な流れの一部として存在する程度です。
ところが「君が好き」ではタイトル名である「君が好き」をサビでこれでもかと言うくらいに何度も何度も繰り返します。かなりの異例です。君が好き以外に、Foreverと常套句が似たような構成ですが、曲名となっているのは君が好きとForeverくらいです。
そんなかなりイレギュラーなことをしたのは、この煮え切れらない、でも繰り返される想いを、なんとか表現したかったからではないでしょうか。
心の声は誰が聞くこともない それもいいその方がいい
僕の手が君の涙拭えるとしたら それは素敵だけど
君もまた僕と似たような
誰にも踏み込まれたくない 領域を隠し持っているんだろう
ちょっとだけ別の曲「しるし」の歌詞を引用しました。しるしという曲は、この心の声は誰が聞くこともない それもいいその方がいいって箇所から生まれた(作られた)んじゃないかと思うくらいのパワーワードだと僕は勝手に思っています。
純愛なのに逆じゃない?と思うかもしれませんが、それについて語り出すと長くなりすぎるので別の機会に(笑)
で、そのしるしより古い曲で似たような表現がされていたのがこの、君もまた僕と似たような 誰にも踏み込まれたくない 領域を隠し持っているんだろうです。
隠し領域は僕にもあって、あなたにもあるんです。心の声も同じように、双方向に誰が聞くこともない それもいいその方がいいなんです。
もしこの箇所を物理的な領域として読み解くなら、例えば二人には家庭や恋人という踏み込めない領域があるとも読めるかもしれません。
たぶんこの辺りは櫻井さんの考える愛の本質的なところなんじゃないかと思います。
誰にも踏み込まれたくない領域=心の声です。それをお互いに持っているとしても、それで愛がなくなるようなことはないよ、と。
終わりに
「君が好き」に描かれているのは、手放しでは喜べない、でも抑えきることのできない想いに突き動かされている君と僕です。
窪塚洋介さんが出演の君が好きのミュージックビデオの中で描かれる男女も、禁忌を犯して結ばれますが、最終的にはハッピーエンドと言いづらいラストを迎えます。
全てを捨てても本当に幸せになれるかも分からない荊の道に進もうとしている二人。わかりやすい円満なラブソングではなく、危なげで悩みの中から見出した消せない想いを綴る詩、それが君が好きです。
もちろん歌詞の解釈に正解はありませんので、これが絶対的な答えだとは思っていません。絶対的な答えなんて作った本人のみぞ知るだし、場合によっては本人も知らないこともあると思います。
聴く人により違った風に聞こえてくるのが歌や歌詞、延いてはアート全てのいいところです。
よかったら皆さんも好きな曲について、考察してみたり、それにあった写真を撮ったりしてみてください。コレ、めちゃくちゃ楽しいですよ〜!!!